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【FMシアター】『面影』感想。デミヒューマン(亜人)と人間の交流。(オーディオドラマ紹介)

オーディオドラマは、出演者の声臨場感のある音楽や効果音を組み合わせてつくられた創作ドラマです。映像はついておらず、耳で聞いて情景を思い浮かべて楽しむ作品です。

 

このサイトでは、土曜日におすすめのオーディオドラマ作品の紹介記事を投稿しています。

サムネイル,FMシアター紹介2,面影

 

1.あらすじ

主人公の右子(みぎこ)の勤め先は「特別収容生物研究所・東京支部」、未確認生物である怪物を収容し世話をする職場だ。

 

見た目は人間そっくりの怪物、デミ・ヒューマン(亜人)。毒で人を殺せる怪物の「異(こと)」を、右子は担当することになった。

 

(職員) まだ続けてるの?怪物の世話。

(異) 待って。もう少しだけここにいて欲しい。

(異) 寂しい、から。

 

まるで人間のように喋り、人間のような顔をしている異(こと)の殺処分をめぐって、右子は思い悩む。

 

怪物の異(こと)は、亡くなった娘に似ていた……。

 

怪物と人間の交流を、静かに終わらせる物語。

 

 

2.聴きどころ

2-1 怪物に感情移入する主人公

右子はその昔、娘を交通事故で亡くしていました。自分が繋いでいた手を離してしまった過去に、ずっと罪の意識を感じ続けています。そこへ、娘そっくりの異(こと)が現われたのです。

 

怪物の異との会話は、異が毒で人を殺せる力を持っているという事実を知らなければ、まるで本当の親子の会話のようです。

 

「ありがとう」、「寂しい」、「そばにいて欲しい」、「右子さんの所為じゃない」。異との温かい会話や、主人公がデミヒューマンに感情移入するシーンは聴きどころです。

 

 

2-2 人間と怪物の違い

作品をお手軽な「癒しと再生の感動物語」にしないところが、作者の兵頭るりさんの凄いところです。

 

「右子さんの所為じゃない」という癒しの言葉は、罪悪感を抱える主人公が言わせたのかもしれません。恐怖の対象にもなる怪物を手懐けて、身勝手に利用しようとする残酷さも感じさせます。

 

多様性やダイバーシティという単語だけでは決して埋められない溝があり、「私たちのルールに合わせるなら許可してあげる」という人間の傲慢さを感じさせます。

 

もしも、デミヒューマンの異が無差別に人間に危害を加える存在なのだとしたら……?

 

(職員)多様性を受け入れるのと、秩序を保つのは別なんですよ。

 

右子は人間で、異(こと)が怪物。その違いがハッキリと突き付けられます。

 

主人公の右子は、自らの手で装置のレバーを引き、娘そっくりの異を殺処分します。

 

とても静かな、お別れの物語です。

 

 

 

 

3.少ない出演者で濃い演出

出演者が5人という少人数で、こんなにも静かで感情の揺れを感じさせる作品は凄いです、兵頭るりさん。

 

多様性(=ダイバーシティ)のテーマも時流に合ったストーリーだと感じました。

 

私は「怪物」という言葉から、メアリー・シェリーの小説『フランケンシュタイン』を連想しました。放送時期と同じ週に、偶然このブログでも、フランケンシュタインの怪物を扱い、多様性の恐さをテーマにしたエッセイを投稿していました。よろしければご覧ください。

 

 

オーディオドラマ『面影-もう一度出会えたら、何を伝えますか-』は、しみじみとした気分でもう一度聴きたくなる作品でした。

 

 

<作>

兵藤るり(Hyodo Ruri)

 

<音楽>

池永正二(Ikenaga Shoji)

 

<出演者>

山本右子:坂井真紀(Sakai Maki)

こと:田畑志真(Tabata Shima)

すみれ:野田あかり(Noda Akari)

同僚:猪塚健太(Iduka Kenta)

夫:東幹久(Azuma mikihisa)

 

<制作スタッフ>

制作統括:松川博敬(Matsukawa Hirotaka)

技術:佐藤生康(Sato Ikuyasu)

音響効果:井上直美(Inoue Naomi)

演出:原英輔(Hara Eisuke)