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【耳の認知機能】No.001『LISTEN聞くことは最高の知性』は話を聞いてくれない上司や部下への処方箋になるか?批判的レビュー(書評・考察まとめ)

耳の認知機能を、様々な角度から知るシリーズです。子どもの発達/認知症予防/社会人のスキルアップのヒントを紹介します。

サムネイル,耳の認知機能,LISTEN聴くことは最高の知性

今日のテーマは「聞く力」です。

 

「聞く力って何?」という疑問や、「聞く力が問題解決に役立つのか」という観点で、日経BPから出ている『Listen 聴くことは最高の知性』を読んで考えたことをお伝えします。

 

 

 

1.本の特徴と私の読み方

この本は、アメリカのジャーナリストが、「聞くこと」をテーマにインタビューをした内容をまとめ上げた1冊です。

 

全部で18章もある分厚い本です。これが本屋で平積みにされて結構売れているみたいです。もしかすると、次のように感じている人が多いのかもしれません。

  • 上司が全然話を聞いてくれない。
  • パートナーがいつも忙しくしている。悩んだり困ったりしている時に、全然気持ちを大事にされなかった。

「相手に何とか話を聞いてもらうための方法論」を本の中に見つけたい気持ちはとてもよく分かります。

 

私自身も、相手の聞く姿勢を変える方法論を求めていました。しかし、この本では残念ながら見つけられませんでした。

 

この本は、「聞く知性」というより、「聞いているフリをする演技力」を付けるための本だと感じました。その理由を、本の内容と合わせて紹介します。

 

 

 

 

2.本の批判的な感想

目指す姿がイメージできない

テーマは幅広く、脳神経学・生理学・音声学・心理学・営業話術・交渉術と、あらゆる分野が入り混じっています。

 

分野が広いこと自体は良いのですが、問題点はテーマが転々として統一性に欠けている点です。

 

それぞれのエピソードを並べることが重視されていて、結局1つのテーマに深く踏み入らずに、エピソードやノウハウが、すべて同レベルの価値あるものとして並べられています。

 

インタビューへの熱意は感じられますが、意見の横流しという印象が拭えませんでした。何かを変える力は、優先順位を付けてPushするによって生まれますが、著者が価値の優先付けをしていないため、読者に目指して欲しい方向性がイマイチ伝わってきませんでした。

 

 

 

聞く力と知性はどうやって測定するのか

そもそも、聞く力は何か?知性とは何か?その定義があやふやです。

 

聞く力はどうやって測るのでしょう?本を読んで身に付くものでしょうか?

 

定義や場面がバラバラなので、聞く力の評価方法もテーマによって変わります。

  • 営業で獲得した案件数
  • カウンセリングをした人数
  • 満足度アンケートの評価
  • 社内評価
  • 聞いている風に演技をして意見をごり押しした回数

 

今の私なら、読む前の自分自身にこう言いたいです。

「『あなたには知性がありますと言われて、気分を良くしたいだけなんじゃない?」

 

 

問題解決に活かすことは難しい

この本を問題解決に活かすことは難しいと感じます。

 

話を聞いてくれない上司や、指示を聞かない部下がいた時の対応方法などは、この本では分からないので、きっぱりと諦めて別の情報を探しましょう。この本は教養本として読むくらいがちょうど良いと思います。

 

※おすすめする本へのリンクを、この記事の最後に載せましたのでぜひ読んでいただきたいです。

 

 

 

 

3.高級感あふれるカバーデザイン。仕事ができる人の印象づくりに使える本

ハッキリ言えば、内容はイマイチです。しかし、カバーデザインがとても素晴らしいです。

 

落ち着いたイメージを与える緑色のカバーで、光が当たるとタイトルの文字が金色に光ります。帯には「『聞くこと』は最高の知性 知性豊かで想像力のある人になれる」と書いてあります。家の本棚やデスクに1冊あると、本棚がキュッと引き締まって見栄えがよくなります。

 

デキル人の印象づくり」には最適ですので、良い印象を意図的に演出したい方のニーズに応えてくれます。

 

 

 

4.(悪用厳禁)上司が部下を服従させる方法

聞いているフリをして聞き流す

この本に載っている「聞く技術」は、どちらかというと悪用する方が使えてしまうような気がします。

  • オウム返し(相手が言ったフレーズを繰り返す)
  • 相手に話す時間を与える

こうしたハウツーは、「話す時間は与えた、言わなかった方が悪い」という保身にも使えます。「聞いているフリをして、その場をやり過ごすノウハウ」としても使えます。

 

「話をちゃんと聞いて欲しい」と願う人には残酷ですが、話を遮ったり意見をごり押しする人を変えることは本当に難しいですし、そもそも変える必要さえないかもしれません。(少数のまともじゃない人への対応がとても難しい!)

 

おそらく、多くの人は「相手が話を聞いてくれないことへの無力感を打ち破る方法」を求めています。それを伝えてくれないこの本を読み終わって残ったのは、「日経BP社の販売戦略に釣られたなー」という感情でした。

 

 

心理的安全性の方が大事

小手先のノウハウよりも、「率直な意見を言った後に、陰湿に仕返しされないことへの信頼感」の方がずっと大事ですね。

 

話す時間をもらっても、暴言を吐く人に本音なんて言えない……

気休めに傾聴されても、普段から人権が尊重されていない……

 

対話のテーブルに着く以前に、コミュニケーションをした後の心の安全が守られていなければ、いくら話す時間を作っても、どんな質問をしても、本音にはたどり着けないと思います。

 

 

 

 

5.おすすめの書籍

私は、聴く力を構成する要素の1つに、「簡単に決めつけない態度」があると考えています。今すぐに意見を差し挟んだり、善悪を評価したい気持ちを自制する態度です。

 

チームのコミュケーションをより良くしたい場合は、考え方をテーマにした次の本の方が役立ちます。

 

『心理的安全性のつくりかた』

連携がとれた居心地の良いチームを作りたいなら、『心理的安全性のつくりかた』の方がテーマに合っています。

 

ぬるい職場は誤解」とのキャッチコピーで、お互いに主張をしあい、相手の話を聴いた上で合意につなげるグループ作りが解説されています。

 

 

『ネガティブ・ケイパビリティ』

精神科医の先生が書いた本です。意見や感性が違う相手にどう接するか、感情にまかせて怒ったり排除したりせずに、よく分からないモヤモヤした感情を自分の内側に、とりあえず留めておく能力を解説してしています。

 

 

『叱る依存が止まらない』

言う事を聞かせて服従させる悪い人のやり口を知ることができます。いつもキレていて、人の話をまるで聞かない人の思考パターンが手に取るように分かるようになります。

 

叱る人は、叱られる人に依存しています。ハラスメント加害者や、自己愛性パーソナリティ障害(NPD)の特徴でもある「決めつける正義感、話をねじまげる、話を聞かない」などの特徴がとてもよく分かりますよ。自衛する方法が身に付くのでおすすめです。

 

 

6.まとめ

私が考えるこの本の価値は、

  • とても見栄えの良いインテリア
  • 他人を服従させる小手先のハウツーを知ること

です。

 

脳神経学が知りたいなら解剖学の本を読んでみてください。音声学が知りたいなら音響の入門書を読んでみてください。

 

この本は、対話にかける時間や小手先のハウツーよりも、心理的安全性が守られているかどうかに目を向けることの必要性を感じさせてくれる一冊でした。