家庭教師で悩ましいのは、少ない授業で5科目を依頼された時の優先度と時間配分です。
それは、ある科目を教える優先度を低くして「後で教える」ことであって、「教えないことにする」ことではありません。
市立の学校で、英語を教えなかったために裁判で違法になった判例があります。これは『ラーニングダイバーシティの夜明け』の中にも出てきます。
- 特別支援学級の学習指導要綱では、知的障害でなければ、外国語を含むすべての教科を教える必要がある。
とされています。学習指導要綱は絶対的な存在で、ここに書かれているかいないかは重要です。
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家庭教師は民間サービスなので学習指導要綱には直接的には縛られませんが、両親の希望通りに教えないことは契約違反につながりかねません。このあたりは「家庭の」教師として、お金を払っていただく両親の要望を優先することも時には必要です。
読んでみると、教師側にもかなり落ち度はあるようでした。
教諭作成に係る各教科年間指導計画は,国語,数学,社会、音楽,美術,技術・家庭,英語について4月から3月まで毎月同じ内容であり,英語についても順を追って理解が進むような計画となっていない。
特別支援教育を受け持つ先生は、とても熱心でやる気に溢れた先生と、いわゆる「訳アリ」や問題を起こした先生が人事異動でやってくる場合があることが、多くの本やSNSでは書かれています。記録を読む限りは、この例では意欲が低い先生という印象です。
英語を教えなかったことは良くないにせよ、「どこまで英語を教えるか」の段階設定はとても難しいと思います。「尻切れトンボに英語を教えるよりも、集中できる時間を伸ばしたり、自身の持てる科目を伸ばしたりする方が優先」と感じる気持ちもわかります。
なお,a教諭は,控訴人が入学する前年の平成■■年度に週4回の英語の授業を実施したものの,情緒学級の生徒は小学校五,六年生頃の授業をきちんと受けていないため,1年間教えてもほとんど力がつかなかったことから,国語,数学,社会,理科を教えたほうがいいと思われたこと,平成■■年度当初,控訴人はローマ字の読み書きができない状態で,平成■■年度に1年間教えた生徒よりも厳しい状態にあったところ,ローマ字の読み書きができない状態で,中学校1年生の検定本を使用して英語の授業をしても学習効果は上がらず,ローマ字を教える以上は難しいと思われた
旨供述する。
中学2年生になっても目標を同じ文章のまま使い回ししていたことや、何よりもたった1人の教師の裁量で「教えてもムダ」と13歳で足切りするのは「裁量権の逸脱」ということですね。
義務教育は基礎科目の全部入りパックのようなものなので、さすがに中学生で将来性の見切りをつけられるのは早すぎだと思います。生徒が嫌いな科目を教えていると、集中力が続かずトイレに立とうとしたり、寝たり、反発されたり、教える方が嫌になるのも分からないことはないですが、そこは胆力が問われると思います。生徒が苦手でも、嫌がられても「学ぶ機会の提供」は必要です。
088661_hanrei.pdf (courts.go.jp)