学びキャッチアップ

学びをシェアするブログです! (1)専門職スキルで再就職&転職 (2)投資とトレードを本からコツコツ学ぶ (3)大人のいじめの対処法 (4)オーディオドラマ&日本の古典の魅力を紹介

FMシアター名作おすすめ001『小指の想ひ出』虐待という言葉を知らない子どもたち【オーディオドラマ紹介】

このサイトでは、オーディオドラマの中から、選りすぐりの作品を紹介します。

オーディオドラマはサウンドドラマとも呼ばれていて、映像がない音声だけのドラマ作品です。※毎週土曜日に1記事投稿を目指しています。

サムネイル,FMシアター,オーディオドラマ紹介,おすすめ

今日は、オーディオドラマ「FMシアター」の名作おすすめ紹介No.001です

 

初回放送日:2002年3月23日

テーマ:虐待、ガチャガチャ

主人公:小学6年生

 

1.あらすじ

小学6年生のリンタロウ、エリカ、トウジ。

 

3人の学校では、ある都市伝説が噂になっていた。「神さまの小指」を手に入れると幸せになれる。それは町のどこかのガチャガチャに入っているらしい。

 

体に「しるし」のある者だけが手に入れられる特別な小指。3人の共通の願いは、虐待のある世界から抜け出すことだった。

 

2.脚本のココがすごい!

聴いてみると、この脚本には虐待という単語が一言も使われていません。これは凄いことです。

 

簡単にリスナーの感情移入を狙わずに、確実に虐待だと分かる細かい表現が重ねられています。

 

また、元々は楽しむために作られているガチャガチャも、登場人物たちは虐待から逃れるための救いの儀式として回します。(放送当時の2002年は、おそらく「親ガチャ」なんて言葉は広まっていませんでしたね。)

 

支援機関らしい団体は出てこず、友達と親という限られた世界でしか生きられないという苦境がひしひしと伝わってきます。

 

都市伝説に希望を託すしかないという状況にも説得力があります。

 

(トウジ)

ぶつぶつ言いながらよ、そのたびにバシッ、いいよなぁバシッ、居場所があってバシッ。(02:30)

 

(リンタロウの母)

痛いのぐらい我慢しなきゃ。

りんちゃん。

長袖着なきゃダメよ。

まだ残ってるから傷跡。(14:00)

 

(エリカ)

あの毛虫みたいな指も、タワシみたいな舌も、みんな本当のことなんだから。(32:30)

 

まるで体験談を聞いているようなリアルさや生々しさがあります。

 

 

3:感想:距離と時間が心を癒やす

虐待という単語は、大人が物事を考えるために使う言葉だと思っています。子どもたちはそんな言葉を知らずに育つ方がよっぽど幸せです。

 

虐待という言葉を知らない子どもたちが虐待に出会った時に、起こり得る事をとことん想像して考え抜いた脚本だと感じます。

 

物語は大人になったリンタロウが回想することで進行します。痛かった思い出が、急激にハッピーな思い出に変わることなんてありえませんよね。1年ずつ「痛かった出来事」との距離が開いていくのを確かめることで、気持ちは回復していくものなのかもしれません。

 

当時の3人は生き延びて大人になり、新しい儀式を始めます。儀式と呼ぶにはあまりにも日常的でありきたりなやりとりなのですが、そのラストにじんわりと胸が暖かくなり、救いを感じる作品です。

 

4.再放送の予定

今は再放送の予定は発表されていません。

 

ですがもう一度聞く方法はあります!

 

公式サイトにリクエストを送ると、再放送される可能性がグンッと高まります。

NHKや番組についてのご意見・お問い合わせ | NHK みなさまの声にお応えします

メールなら5分もあればリクエストを送信できます。ほかに電話、手紙、FAXでもリクエストを受け付けています。

 

5.テーマが似ている関連小説

直接的な関係性はありませんが、テーマが似ていると連想した小説を紹介します。どの本も味わい深いので、ぜひ手にとって読んでみてください。

 

辻村深月『かがみの孤城』

中学生の主人公が登場します。いじめという言葉が1回も使われることなく、いじめの状況が表現されています。創作への向き合い方に共通点を感じました。

 

道尾秀介『月と蟹』『光媒の花』

子どもたちの力だけではどうにもならない状況に、儀式をして対処しようとするところに共通点があると感じました。

 

 

 

6.出演者・スタッフ

FMシアター『小指の思ひ出』

<出演者>

池内万作(Ikeuchi Mansaku) <リンタロウの語り> 

椿直(Tsubaki Nao) <リンタロウ>

森聖矢(Mori Seiya) <トウジ>

清水理沙(Shimizu Risa) <エリカ>

浅野和之(Asano Kazuyuki) <りんたろうの父、楠>

今江冬子(Imae Toko) <りんたろうの母、さわこ>

渡辺陽介(Watanabe Yosuke) <かじ>

大森美紀子(Omori Mikiko) <杉本>

石本竜介(Ishimoto Ryusuke) <駅員>

 

<制作>

制作統括:音成正人(Otonari Masato)

作:小里清(Ori Kiyoshi)

音楽:菅野由弘(Kanno Yoshihiro)

演出:吉田努(Yoshida Tsutomu)

技術:小林清(Kobayashi Kiyoshi)

音響効果:加藤直正(Kato Naomasa)

 

オーディオドラマ「FMシアター」は毎週土曜日、夜9時からの放送です。1回完結ですので、ぜひ今週から聞き始めてみてください。