オーディオドラマは、役者が演じる声に合わせて、臨場感のある音楽や効果音を加えて創られたドラマ作品です。
このサイトでは、おすすめのオーディオドラマ作品を紹介しています。今日は「青春アドベンチャー」の名作『新訳・遠野物語』を紹介します!
1.あらすじ
遠野には天狗も座敷童もいる。主人公の山之上ひさしは学費を稼ぐために東京の大学を休学して、ふるさとの岩手県の遠野市で介護職員として働いている。先輩の島田(朝倉あき)と働く中に、遠野の昔話をレクリエーションに取り入れていくうちに不思議な出来事を体験する。
2.1人6役の演じ分けを楽しめる!
この作品の聴きどころは加藤諒さんと朝倉あきさん、有福正志さんの一作ごとの演じ分けを楽しめることです。全5話の中でなんと1人6役を演じ分けています。現代の介護施設職員の2人の場面から始まり、回想や「語り」の中で子どもから高齢者まであらゆる役が演じられます。
また、第3話で千葉雅子さんが演じる老婆が、肝を要求してくる恐ろしいシーンには聞き入りました。久々にオーディオドラマを聴いて怖さでゾクゾクしました。
3.原作ありオーディオドラマならではの脚色
原作リスペクト
製作スタッフに方たちに、原作への深い理解や敬意を感じられることもこの作品の良いところだと思ます。
『遠野物語(とおのものがたり)』を書いた柳田国男、『新釈・遠野物語』を書いた井上ひさしはどちらも岩手県の釜石を訪れています。オーディオドラマの舞台も岩手県の介護施設、主人公が東京の大学を休学して釜石に来たところも井上ひさしの人生になぞらえています。
こうした細かな設定に原作への深い理解を感じ取れます。深い知識を持つことが敬意につながることをしみじみと感じます。オーディオドラマは、こういうように、ドラマを作る人が関わる人達を大事にしようとする気持ちが感じられるところがまた良いところです。演出の吉田浩樹さんが出演者を紹介する文章を書いていることも熱量を感じさせます。
音楽と音響効果
作品には音楽と音響効果があるので、物語を自然にどんどん聞き続けられます。作品全体を通して違和感を感じさせないところは実はとても凄いことだと思います。作曲家の和田貴文さんが「不思議な遠野の話を彩る音楽はどんなものがいいだろうか」と考えていたように、作品の印象を創る責任重大の役割です。
オーディオドラマの音楽は、どれもその作品のためだけに作曲されているので、リスナーにとっては毎回がリッチな体験だと感じています。日本文学が原作で日本らしい曲と言うと、ドレミファソラシドの特定の音を使わないヨナ抜き音階?と思うのですが、そんなに単純なものでもないような気がします。このあたりはプロの仕事ですね。
『新釈・遠野物語』で私が特に好きなのは、第2話のオーボエのテーマフレーズとハープが合わさった曲です。とても話の雰囲気にマッチしています。さらに、登場人物が遠くで吹いてるトランペットは音量を小さくして、エンディングに向かうシーンでは作品のテーマフレーズとして劇伴を際立たせたりと、聴けば聴くほど細かな工夫を発見できる味わい深い作品だと感じます。
4.関連作品
井上ひさし原作のオーディオドラマは他にもあります。今回と同じように、脚本の藤井靖さんと音楽の和田貴文さんが関わっている『四捨五入殺人事件』です。原作はこの文庫本です。
岩手県の文学作品と言えば、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』があります。このストーリーのその後を書いたオーディオドラマ作品があり、『帰ってきたジョバンニ』というタイトルで放送されました。劇作家の別役実は『ジョバンニの父への旅』という作品も発表しています。公式音源を聴けないので、2026年の宮沢賢治生誕130周年の時に何かしら放送して欲しいと期待を持っています。
5.出演者・スタッフ
<作>
井上やすし(原作)
<出演者>
加藤諒(Kato Ryo)、朝倉あき(Asakura Aki)、石井愃一(Ishii Shinichi)、有福正志(Arifuku Masashi)、小山剛志(Koyama Takeshi)、千葉雅子(Chiba Masako)、
<製作>
制作統括:藤井靖(Fujii Yasushi)
脚色:大河内聡(Okochi Satoru)
技術:木本耕平(Kimoto Kohei)
演出:吉田浩樹(Yoshida Hiroki)
音響効果:和田尚也(Wada Naoya)
音楽:和田貴史(Wada Takafumi)