『加速経済ベトナム』の書評・要約・レビュー・感想です。
ベトナムの国民性や、企業が取り組んでいる課題をわかりやすく解説してくれる本です。
1.本の構成
第1章:ベトナムの経済
第2章:アミューズメント・レジャー産業
第3章:日本食、食品
第4章:日系IT企業
第5章:不動産
第6章:インフラと電力
初版:2024年9月25日
2.ベトナムの土地と不動産
ベトナムで仕事をすることを見据えているなら第5章の不動産の内容は注目です。ベトナムはすべての土地が国有財産です。外資も内資も、政府からの土地使用権の範囲内で土地を利用する必要があります。
また、都市部で低価格の賃貸住宅が不足していることや、多くの若者がルームシェアをしていてカフェでのひとりの時間を欲しがっているなどの情報も知ることができます。
この本では、今のベトナムの全体像をざっと知ることができる本です。
- 平均年齢が31歳
- 国民性として日本のアニメや漫画が人気
- アミューズメント施設はまだまだ少ない
- ローンを積極的に組んでいる
- パソコンよりもスマホの保有率の方が高い
- 交通渋滞や交通事故が課題
そして、この本を読む1番のメリットは、こうした要素に対して企業の活動事例や国の政策・日本の支援の事例が詳しくわかりやすく解説されていることです。
企業や国の事業課題は、ベトナムという国に住む人の生活向上の余地と考えることができます。未開拓の領域が豊富に残されています。
3.ベトナムにDX人材が大勢いる
注目するのは次のフレーズです。本から引用します。
国策でIT人材の育成を図ってきた(194)
よほど高いレベルを求めなければ、若年層を中心にITリテラシーが高い人材は豊富にいる(195)
ベトナムは2000年代から安い賃金でITの仕事を請けてきました。このことから、日本人がITスキルを「リスキリング」することは、ベトナム人の若い人材との仕事の奪い合いも想定する必要があるかもしれません。ベトナムから日本に来て働く人材が増えるかもしれません。
4.物流が課題
ベトナムはまさに「フロンティア」という解説がされていました。
特に食料の物流課題は次のように解説がされています。
- 安定した冷蔵配送の仕組みに乏しく、川上から川下まですべての取引が小規模事業者による多重構造になっている
- 輸送中の品質劣化と高い廃棄率
- 供給が不安定
- 追跡システムが無いので安全性に問題がある
注目をするのは上記の課題を解決する事業を行っているKAMEREO INTERNATIONALの事業活動です。
- 自社でエンジニアを抱えて使い勝手の良いプラットフォームを開発した。
- 足を運んで営業をして農家と契約をした。
- バイクの荷台や箱を試行錯誤した。
読み物として面白く、開拓の精神性を強く感じました。
ASEAN諸国を素材や鉱物のリサイクルという視点から見た時、廃プラスチックや産業廃棄物の最終受け入れ先の国々という特徴があります。『必然としてのサーキュラービジネス』も合わせて読んでみてください。