小泉進次郎構文は、医療福祉の分野では役立つと感じています。
その最大の効果は、出来事をそのままに受け止める、という効果です。
1.進次郎構文とは?
ほとんどがネタとして使われている進次郎構文は、政治家の小泉進次郎氏のインタビューから生まれたミームです。
一般的には「Aと思います。なぜならBだからです。」と説明するところを、「Aと思います。なぜならA´だからです。」と同じ意味を繰り返す言い方です。
今のままではいけないと思います。
だからこそ日本は今のままではいけないと思っています。
実際のテレビではこれに「ということを世界にもっと発信していくべきだ」と続いたようです。
私は、進次郎構文には、ネガティブがへばりついている用語に使えばネガティブな要素を薄めてくれる効果があると思います。
2.ネガティブ・チェックリスト思考
ネガティブ要素がつきやすいのは病気の名前です。
普段は耳にしない病名がテレビやSNSで多くの人に知れ渡ると、たいていの病気は「~ができない」や「~に悪い」というように、症状が「ネガティブなチェックリスト」として使われます。
発達障害を例にすると、
- 整理整頓が苦手。発達障害だ!
- 時間管理や優先順位付けが苦手。発達障害だ!
- 発言が失礼だ。発達障害だ!
- 旦那または妻が暴言を毎日吐いてくる。発達障害だ!
と、連呼されるうちに「発達障害」という病名が、何もできないポンコツな存在、または迷惑な人を馬鹿にする言葉として使われ始めます。本来は苦しんでいる人が楽になるための手がかりになるはずの病気の名前が、ベタベタと触られるうちに汚れていくようなイメージです。
他にも、怒りっぽくて瞬間湯沸かし器のような人も、病気の名前や症候群を使えば考えなくて済むので楽です。
- 怒るなんて更年期か!?
- 認知症が始まったか?
- 生理か!?
というように、感情の揺らぎを手っ取り早く落ち着けようとする行動によって、病名がネガティブな感情を吐き捨てるゴミ箱になります。
3.進次郎構文の登場
そこで進次郎構文です。
- 怒りっぽい人は、怒りっぽい人です。
- 整理整頓が苦手ということは、整理整頓が苦手ということです。
- 時間管理や優先順位付けが苦手ということは、時間管理や優先順位付けが苦手ということです。
- 発言が失礼な人は、発言が失礼な人です。
- 旦那または妻が暴言を毎日吐いてくるとは、旦那または妻が暴言を毎日吐いてくることです。
こうして事実を一旦確認して、そこから考えをまとめることができます。
4.自分の頭で考える
落ち着いて現状を確認するステップをつくることで、複数の相関関係をじっくりと考えることができます。怒りっぽい行動の理由を考えると、これだけの理由が考えられます。
- 更年期障害
- 寝不足
- 空腹
- 性格
- 血液型??
- 姓名
- 認知症 … 怒りっぽく性格が変わったように見られる人もいます。
- 脳卒中後
- ADHD
- 自閉症(ASD) … 社会正義や社会的にあるべき姿を目指した怒りが多いかもです。
- 自己愛性パーソナリティ(NPD) … ターゲットが思い通りにならないときに「自己愛憤怒」という怒りで相手をコントロールしようとします。個人的な支配欲とうまくいかないイライラに根付いた怒りです。
- PMS(月経前症候群)
- 適応障害
- うつ病
- 単に、舐められたくないだけの人
- 単に、メンツを保ちたい人
- 単に、気遣いができない人
- 歯が痛かっただけ
可能性の低いものから高いものまで、たくさんの可能性を挙げることができます。
こうして見立てをした上でうまく距離をとったり、相性が良くない相手からの影響を事前に予防するために病名を使ったりするのはアリです。
5.医師・看護師・先生・教師にも決めつけ人間はいる
日常に潜む罠として気をつけることは、病院の医師・看護師、学校の教師、福祉職の中にも、こうした病名を汚して無理やり着せるような人が一定数いるということですね。
バリバリ働いていて激務をしていたビジネスパーソンがうつ病になり、福祉支援を受けるときに知的障害者向けの対応をされることもあるようです。(このあたりの話は割とある話なので別記事で書きたいです)
ストレスで体も心も擦れ切った看護師や福祉職が「精神病棟にぶちこんだ方がいい」とイライラに任せて言ったとか言わなかったとか……医師が研修医を病気扱いしていじめをしているとかしていないとか……
とにかく役職や職業は人格を現さないので、アイスクリーム屋の店員さんの方がこのあたりの決めつけをしない感性を持っていることもあるかもしれません。
6.進次郎構文は浄化の呪文
同じことを繰り返す構文は、わたしたちの揺らぐ気持ちを落ち着けてくれます。
- たくさんの理由を考えることができる
- フラットな見方に立ち戻ることができる
- 悪いイメージを拭い去る
- 憑きものを落とす
- 気分を落ち着けられる
などメリットはたくさんです。
誰かを見て「もしかして[なにかの病名]かも!」と心に浮かんだなら、いちど進次郎構文で繰り返してみると心が落ち着きます。
診断名はネガティブな感情のゴミ箱ではなく、助けを求めている人の手がかりになればいいと私は思っています。
「この認知症が!この発達が!」と病名を使ってネガティブな気持ちを出している人を見かけたら、繰り返す構文の浄化の効果を一度試してみるといいかもしれません。