このサイトでは、「性教育」をテーマに記事を投稿しています。「性=セックス」ではなく、「性=ライフ(命、生活、人生)」の視点で、本紹介を中心に金曜日に投稿しています。
今日は、家庭や職場や友人関係で、「LGBTQ+のカミングアウトをされた時、どう対応すれば良いの?」ということをテーマに、思いがけずにカミングアウトを受けた時の対応方法のポイントを案内します。
- 1.カミングアウトとは
- 2.気持ちを想像する
- 3.どう対応する?
- 4.傷つく反応1その場の反応
- 5.傷つく反応2アウティング
- 6.カミングアウトをされて1人で受け止めきれない時の相談先おすすめ
- 7.LGBTQ+を知りたい人のための記事
- 8.まとめ
1.カミングアウトとは
カミングアウトという言葉は、元々は「Coming out of the closet(狭いクローゼットから外に出てくる)」という英語からきています。自分がレズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダーであると、自発的に伝えることを意味します。
これとは逆に、誰にも打ち明けない状態を「Be in the closet(クローゼットの中にいる)」と言います。カミングアウトは1回に限らず、伝える相手やライフイベントによって、何度も行われることもあります。
2.気持ちを想像する
カミングアウトをする人の気持ちを決めつけることはできません。ですが、こう想像することはできます。
- 打ち明けて、拒絶されないかとても不安。
- 他の人には、勝手に話を広めて欲しくない。
- 味方を作りたい。困っている事があるから対応して欲しい。
こうした気持ちを想像することが、相手にとってプラスになる(マイナスにはならない)対応につながります。
また、カミングアウトは、リアクションを求めるものだけではありません。次のような気持ちも想像できます。
- ただ知って欲しい。
- 今まで通りの関係でいて欲しい。
- キャリアや人間関係が変化して、良いものになるか、辛いものになるかは分からない。できるだけ波風を立てたくない。
想像をすれば、昨日今日にふと思い立って打ち明けたのではなく、それを声にするまでにとても深く考えて悩み抜いたという気持ちに寄り添えます。そして、あなたを信頼してくれたからこそ、最終的に打ち明けてくれたことも分かります。カミングアウトを受けた事は信頼されている証拠でもあるので、自信を持ってみましょう。
3.どう対応する?
その場ですること
カミングアウトをする側の人は、拒絶されないかをとても不安に感じている可能性が高いです。まずは受け入れる言葉がけが大事だと感じます。
そして、非常に気をつけないといけないのが「アウティングを防ぐ」ということです。後で解説をしますが、勝手に第三者に話の内容をばらしてしまう行動は絶対に避けないといけません。これにより亡くなってしまった人がいます。
また、言葉の受け取り方は人によるので難しいですが、次の3つの方法は、感性に関係なく共通して受け入れられそうです。
- 「話してくれてありがとう」と伝える。
- 自分たちの集団(学校、会社、家族親戚)で、他にこの事を知っている人がいるかを聞いてみる。
- して欲しいこと/して欲しくないこと、を教えてもらう。
他にも、「すこしずつ勉強してみるよ」と伝えたり、「困り事があったら言ってね」とサポートする気持ちを表すことも、相手の気持ちに寄り添えます。
意外と盲点なのが、その「場所」のチェック。プライバシーは守られる?
お互いが話しているその場所は、そのまま話を続けてしまって良い場所なのかに気を付けてみてください。これは、会話のやりとり以前にとても大事で、お互いが安心して話せるかどうかに関わってきます。
職場のオフィスやファミレスや教室など、途中で人が入ってきたり、不特定多数の人が出入りする場所では話が思いがけず漏れてしまう可能性があります。公園のベンチや個室など、落ち着いて話せる場所を選びましょう。
聴く人に時間の余裕がある?
聴く人にも当然予定があるので、時間が無いと中途半端に話が途切れてしまうこともあります。たとえ1日2日待ってもらうことになっても、じっくりと時間を気にせずに話ができる機会を設定することが、お互いのためにもなります。「子供を迎えに行かないといけない」、「外せない打ち合わせが入っている」、学生なら「塾がある」などの場合は、ちゃんと先に伝えてみましょう。何も悪いことではありません。
大事なことは、その場の限られた時間内で、何かをしようと焦る必要は無いということですね。
4.傷つく反応1その場の反応
悪気なく言ってしまいそうな例です。
- 勘違いだよ。がんばって治そうね。
- 芸人になれるじゃん!
- 私のことは狙わないでよね!
- 知ってるLGBTの人を紹介してあげようか?
相手のためを思って言ったことが、実は求められていない発言になってしまうこともあります。
- 差別語を知らずに使ってしまう
何が差別語なのかはピンときにくいので、ちゃんと伝えてもらった方がいいです。「ホモ・おかま・レズ・おなべ」はだめ。「ストレート」はよくて「ノーマル」はだめ、「アライ」はどっち?などと、普段よほど意識をしていないと、とっさに言い分けることは難しいです。相手にとって、使って欲しい呼び方/使って欲しくない呼び方を教えてもらいましょう。
- びっくりして、ずっと黙ってしまう
驚いて言葉が出ない、という状況もあります。ですが、黙っていることは、本心と違って否定のメッセージだと捉えられてしまうことがあります。正直に「びっくりしてなんて言葉にすれば良いかわからない、整理する時間が欲しい」と伝えてみましょう。
5.傷つく反応2アウティング
カミングアウトをする人がとても恐れていて、話を聞いた人が悪気無くやってしまうのが「アウティング」です。もう一度意味を確認すると、「本人の同意が無いのに、第三者に勝手に性自認や性的嗜好をばらすこと」です。
カミングアウトは「自分の意志で自分のことを話す」ことですので、無理やりに扉をこじ開けて誰にでもオープンにすることではありません。2015年には「一橋大学アウティング事件」で1人の学生が亡くなっています。カミングアウトをした人が学生であれ、会社やサークルの知り合いであれ、第三者に話を伝える時は慎重にならなければいけません。そして、カミングアウトを受けるということは、ある程度の負担はどうしてもかかるということです。一人では受け止めきれない場合も当然出てきます。
6.カミングアウトをされて1人で受け止めきれない時の相談先おすすめ
学生の場合は、他の人に広めないことを約束して家族や保健室の先生に相談してみましょう。学生でも、社会人でも、次に挙げた相談先は電話やラインで相談ができますので、利用できることを知っておくと良いかもしれません。
(1)LINE相談 - QWRC【LGBTと女性のためのリソースセンター@大阪】 (jimdofree.com)
(2)AGP無料電話相談のご案内 (agp-online.jp)
(3)性別の違和や同性愛に関わる相談 | 一般社団法人 社会的包摂サポートセンター (since2011.net)
(4)レインボー・ホットライン | 特定非営利活動法人PROUD LIFE
7.LGBTQ+を知りたい人のための記事
子どもとLGBTQ+について知っておきたい方は、こちらの記事にある本がとても読みやすくておすすめです。
LGBTQ+の全体像や、アウティングについては、こちらで詳しく書かれています。
8.まとめ
LGBTQ+をカミングアウトされた時のポイントや、1人で受け止めきれないときの相談先をご紹介しました。いつどこで話を受けるか分かりませんし、相手は見えないだけで身近にいるかもしれません。
もしかしたらウチの子が、もしかしたら友達が、もしかしたら同僚が、などと、顔と名前を知っている身近な人がLGBTQ+として現れるかもしれません。
対応方法のポイントを知っていれば、お互いに良い関係をつなぎ続けられます。時間と気持ちの余裕のある時に、ぜひ関心をもって準備をしてみてください。