1.著者と内容
著者は増田隆一(Masuda Ryuichi)先生。
- 北海道大学の大学院、理学研究院に在籍。
- 2019年には日本動物学会賞、日本哺乳類学会賞を受賞しています。
自然科学の本を多く扱う講談社ブルーバックスの本です。
物語風に説明が進み、親しみやすいで気軽に読めます。生まれたばかりの「うんち君」と旅人のミエルダがうんちの不思議を解き明かしていきます。
2.腸内細菌と免疫:便はDNA個人情報の塊
人のうんちには腸内細菌が含まれています。出した便には、なんと私たちのDNAの一部が含まれています。
体の中では、入り込んだ菌やウイルスに対して「腸管免疫系」という免疫システムが応戦します。役目を終えた腸内細菌や細胞の一部が、うんちとして外に出てきているのです。
海外の面白いニュースに、放置された犬のうんちからDNAが解析されて、飼い主が特定されたケースがありました。
犬のふんを片づけないと「おしおき」 うんちのDNA鑑定で不心得者を特定: J-CAST ニュース【全文表示】
ペットのうんちの後片付けは、しっかりしたいものです。
3.括約筋とうんち、おむつの臭いを消す
どうして、野生の動物はお尻を拭かないのでしょうか?
説明によると、お尻にある括約筋(かつやくきん)の力が関係しているそうです
四足歩行の動物の場合は、括約筋の力でうんちを勢いよく外へ出すことができます。それに比べて、二足歩行の人間は括約筋の力が弱く、どうしても肛門に便がついてしまいます。だからトイレットペーパーが必要になるということでした。
自分でおしりを拭けないときは、誰かが拭いてあげられます。
子育てや介護に目を向けると、替えたおむつの臭いをどうするのかは大きな課題です。臭いを消すための日本企業の努力はすさまじく、今は高性能な消臭スプレーが開発されています。
スプレー系の用品は、肌と口に触れた時の安全性がとても大事です。シーツにかける場合は、肌に与える刺激が小さいノンアルコール成分であることや、赤ちゃんが舐めても安全なように作られていることは大事なポイントだと思っています。
便利グッズの力を借りれば、便を出した本人も、お世話をする人も、スッキリと気持ちよくいられますね。穏やかな時間をできるだけ長くしてあげたいです。
4.愛知県知多半島のエキノコックスは今どうなっている?
2014年頃から、エキノコックスが注目され始めました。これは寄生する虫の一種で、ネズミを食べるキツネや野犬の消化管の中で育ちます。目に見えないサイズの卵が動物のうんちと一緒に排泄され、手指などを通じて人の口に入ることで感染します。
エキノコックス症の発症には10年という長い潜伏期間があり、発症後は肝臓に大きなダメージを与えます。
今は、北海道に次いで、愛知県の知多半島でエキノコックスが発見されています。対策として、「キツネや野犬に触らない」「生野菜をしっかり洗う」「手指の消毒を徹底する」などが推奨されています。
愛知県内でエキノコックス陽性犬が発見された地域|愛知県衛生研究所 (pref.aichi.jp)
愛知県を対象にした最新レポートによると、2020年に3件、2021年に2件、野犬からエキノコックスが見つかっています。キツネから見つかったデータではないですが、今後の調査が気になるところです。
まとめ
腸内細菌や免疫、トイレのお世話など、生き方とうんちは深く関わっています。
人間80年。
食べる限りは出すでしょう。
2つは1つ、セットです。
うんちの奥深い世界が知れる1冊です。
※中学生から読めます。
出版社:講談社ブルーバックス
著者:増田隆一
初版:2021.10.21