人は肌から逃れることができません。
AIや人工知能、メタバースが伸展しても、生身の肌に密着する商品の需要は残り続けます。商品を作るプロセス上にある分野も残り続けます。化粧品業界を追うことで、製造・流通・ブランド作り・売り場の見せ方・社会の価値観など、今の社会の時流が分かるとも言えます。
この本は、就活生・転職者にも必要なマーケティングの視点を与えてくれます。基本用語を押さえた上で、実際の化粧品業界が解説されています。実学と教養を1冊でまとめて得たい人にも最適です。
1.文学部出身者には化粧品業界が有利
1-1 Life Shiftは「就社」よりも「就職」
なぜ化粧品業界が就活生や転職者の自己分析に最適なのか?
それは、化粧品が複合的な商品だからです。
医療、食品、アパレル、文具雑貨など、多くの要素が複合的に関わっているので、自分自身がどの部門に興味関心があるのかを知ることができます。複合的なキャリアを考える上で、「就社」を目的にするのか、「就職」を目的にするのか、自分の好みを深く掘り下げることができます。
1-2「文学部は就職に不利」は間違い
化粧品業界では、厳しい規制があり、宣伝に使える言葉も法律で制限がかかっています。法の目をくぐりぬけて、使っても良い言葉の中から消費者に期待を持たせる表現を見つける仕事は、文学部の知性を活かせると私は思います。
ただし、文学部の学生が実益に疎いというイメージを持たれるのも事実。簿記やマーケティングの資格を取って、アピールの道具を揃えることも大事でしょう。
同様に、言葉を相手にする法学部の人も、化粧品業界を選択肢に入れることも可能です。
2.コスパ最強のマーケティング入門書
セグメント、ニッチャー戦略、ア-リーアダプターなど、用語は知っていても実例に触れる回数が少ない人にとって、この本はシミュレーションする機会を与えてくれます。
- 5フォース分析
- 新規参入戦略4形態
- ターゲッティング6R
- セグメンテーション
- 製品ライフサイクル
すべて、化粧品業界を実例にして解説されています。
もっとマーケティングを深く知りたい人は次の本も良書です。『ゼミナール マーケティング入門第2版』では、マーケティングの基礎が網羅されています。
3.外野には分からない絆(きずな)・軛(くびき)・縁(えん)
化粧品業界では、昔から続く商習慣が根強いことが伺えます。メーカーと販売店の強いつながりや、対面販売をするメリットから、オンライン販売が抑制されてきました。具体的には、販売店に値引きを禁止する「再販売価格維持制度」が廃止されたにも関わらず、その商習慣は長い間維持されてきました。
これは、見方を変えると、安売りによるブランド価値の低下を防ぎ、値崩れを起こさない戦略と言えます。商品の品質はもちろんですが、流通方法や販売方法を管理して、横のつながりをガッチリ組んでおくという地道な行動です。
・業界横並びで商習慣を維持する
・抜け駆け、一人勝ちを許さない
良くも悪くも日本らしさを感じます。今後、肌に関する業界で非接触販売がどのように普及するのかを追っていきたいです。
4.化粧品と詐欺情報商材・マルチ商法の共通点は〇〇
化粧品と情報商材・マルチには共通点があります。
それは「神秘性」です。
ブランド価値を高めたり、リピーターや信者を増やすこと自体は違法ではありません。商品の期待値を上げて、満足度を高める視点は経済には必要です。
今は新品市場、中古市場ともに、消費者は"適正価格"を知れる環境が増えています。化粧品に目を向けると、成分で差異をつけにくい場合、商品をどのように演出するか、また、どのようにプロセスを作るかを考える視点が、生き残るために必要であると教えてくれます。
まとめ
マーケティングの視点から、化粧品業界が解説されています。
化粧品の特徴、文学部生の適性がある分野、マーケティングの基本用語、商品やサービスに神秘性を持たせるブランドづくりのプロセスなどが学べます。
商品を観察する視野を広げる一冊としておすすめです。