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今日は、株式市場の暴落をテーマにした1冊を紹介します。このファンダメンタルズの解説本を、個人の短期スイングトレーダーの人はどのように活かせるのかを案内します。
※必ず免責事項のページをお読みください。
1.著者の経歴と考え方
<プロフィール>
著者の林則行氏のプロフィールは以下の通りです。
- 元ファンドマネージャー
- 米国公認会計士
<著者の考え方>
この本では、次のような考え方で解説がされています。
- 金(ゴールド)の長期分散積立を行う。
- 投資対象は金に一極集中。購入時期を分散させて買う。
- 新高値を超えた投資商品(金)を、さらに買い集める。
<書かれていないこと>
本書はファンダメンタルズの解説本ですので、以下のようなチャートの読み方や資産配分の方法は書かれていません。
- 暴落時にどこまで下落するのか(チャート分析)。
- 資産の何割を金に充てるか(資産配分)。
- いつ売ればいいのか。
(売り時やポートフォリオの配分に触れていないことには、私はすこし違和感を感じます)
経済指標と株価の分析は専門的なだけに、なかなかとっつきにくいので、この本は「視点を広げて、考えるキッカケを作るための本」として読むのが良いと思います。
そうして読むと、スイングトレードに活かせる視点を、幾つか発見できます。
2.今は投資のサイクルのどの時点にいるのか
株式市場は、大きく分けて4つのサイクルがあると言われています。金融相場→業績相場→逆金融相場→逆業績相場です。本書は、新型コロナで量的緩和政策が行われた「金融相場」を起点に、株式市場の下落に備える考え方を解説しています。
元ファンドマネージャーらしい解説で、設備稼働率や失業率などの指標や金融政策と株価の関係が、月単位のチャートで説明されます。こうした分析は、一般投資家にとってはなかなかとっつきにくく予測が難しい内容ですので、考え方をすぐに真似するのは難しいと感じます。指標解説や予測はプロに任せる方が良さそうです。
3.暴落のサインは何がある?
個人の短期スイングトレーダーにとっては、下落の予兆を知りたいものです。この本からは、次の指標は比較的活用できそうだと感じました。
ハイイールド債(ジャンク債)の金利上昇
ハイイールド債(ジャンク債)とは、格付けが低い債券で、債務不履行のリスクが高いハイリスク・ハイリターン(高利回り)の商品です。利率を上げてリターンを大きくしないと誰も買ってくれないので、こうした債券の金利上昇は株式市場の下落のサインだと解説されています。
厳密には、「ジャンク債金利ー10年国債金利」の差が大きいほど危険だと解説されています。
金融株のピーク
金融株の上昇ピーク後の下落も、指数暴落のサインと説明されます。ただし、これは本の性質から「金融緩和時の金融相場では」という条件で考えた方が良いのかもしれません。
また、金融株のピークから指数の暴落までは、2か月から15か月とスパンはいろいろですので、即効性のあるシグナルとは言いがたいです。
金融セクターを深めるオススメ本
金融株の特徴をさらに知ってトレードに活かしたい方は、こちらの本を活用できます。金融株のほかにも、素材株や資源株をテーマに扱っていて、買い/売りの判断材料が見つかります。
4.暴落時には金も下がるという事実
著者は長期投資家の立場に立って、株式の下落に備える手段としてゴールドの時間分散積立を推奨しています。
これと同時に、著者が「株式の暴落時には金も一緒に下がる」という解説をしている点は注目すべきポイントです。
リーマンショックやコロナショック時には、金の下落率は株式市場よりもマシだったというだけで、下落自体はしています。著者が勧める長期分散積立の視点で金を買い続けるのであれば、「一時的な暴落も数十年単位で見れば買い場」というのは確かに納得です。
一方で、短期スイングトレードを主体にしている場合は、暴落に備えて金を買っておくだけでは不十分と言えます。限られた資金量で下落に備えようとするなら、現金比率を高めて暴落後のリバウンドを狙うなどの別の戦略が必要です。
5.まとめと感想
本書は、金融相場以降に、長期投資家の目線で、株式下落に備えて金の長期分散積立を推奨する1冊でした。
短期トレーダーの人にとっては、ジャンク債の利率に目を向けさせてくれる本です。
読み終わって感じたのは、経済指標の分析はプロに任せて良いということでした。個人投資家と個人トレーダーにとっては、リスクを取りに行くのか、行かないのかを決める資金管理や資産配分に集中する方が大事だということを、この本で実感しました。
投資とトレードは上達します!