ことばの杖と朗読ノート

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アメリカ史を学ぶ その2 全体の概観2 『アメリカ史 下』山川出版社 紀平英作

『アメリカ史 上』の続きとなる、シリーズの2冊目。

 

Black Lives Matterに至るまでの大きな歴史の流れを知り、共和党・民主党のそれぞれの政策の特徴を知ることができる。2020年11月3日のアメリカ合衆国の大統領選挙開票に向けて、歴史を学び直す本としてもおすすめだ。

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1. 移民 

20世紀初頭、移民の大半はヨーロッパからの移民であり、投票権が与えられた多くの移民は北部の一大勢力になった。移民の増加に公共インフラや学校の整備が追い付かなかったため生活環境はスラムに近く、移民に対して文化的偏見は根強かった。

 

移民についての記述で目を引いたのは、第二次世界大戦中の日系人に対する待遇だ。

日系人は一九四二年二月に市民権の有無に無関係に軍事的危険のある者と指定され、およそ一一万人が内陸の砂漠や山岳地帯の収容所に強制移住させられた。四四年には最高裁がこの措置を合憲としている。(99頁) 

この他にも、移民が受ける不自由さの事例をいくつか知ることができる。

 

2. 黒人関連の運動 

1909年には、平等な法的権利・経済的機会の平等・人種統合などを掲げて「ナイアガラ運動」を指導したW・E・B・デュボイスが、「全国黒人向上協会(NAACP)」を設立した。この団体は、その後の黒人の市民権運動に重要な影響を与えることとなる。

 

1954年の「ブラウン対教育委員会事件」では、人種を分けた公的教育が違憲と判決された。また、1955年に黒人女性ローザパークスが分離を拒否した出来事から、人種分離バスに対するボイコット運動が始まった。マーティンルーサーキング牧師はこの運動を指導し、ワシントン大行進でスピーチを行った。

 

1964年の市民権法では公衆用施設における人種差別が禁止され、翌年には黒人の投票権の保障が強化され、黒人有権者は増加した。

 

2014年の「ファーガソン・マイケル・ブラウン事件)」では、ミズーリ州で白人警察官が18歳の黒人少年と口論になって射殺したが、不起訴となった。この不起訴の決定は覆られなかった。

 

2020年にジョージ・フロイド氏の殺害事件が起きたが、アメリカ史の中では同じような出来事が繰り返されていたことが分かる。アメリカ黒人の歴史については、この動画でデータを基に、詳しく分かりやすく丁寧に解説されている。

 

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(投稿日2020.6.9 動画作成者:yuki様、アメリカ在住の院生の方) 

 

3. 格差に対する政策 

3-1「偉大な社会」構想

1964年に民主党のリンドン・ジョンソン大統領は「偉大な社会」 構想を打ち出し、次のように言った。

偉大な社会はすべての人々に豊かさと自由があることによって成り立つ。そしてそれには貧困と人種間の不平等の廃絶が不可欠である」(142-143頁)

しかし実際は、ベトナム戦争向けの戦費が拡大し、財政赤字とインフレへの対応のために社会福祉支出が削減され、結果として所得格差が拡大した。

  

この構想に対して、著者は次のような評価をしている。

経済的利害の相対立するさまざまな集団の調和を維持しながら、貧しく弱い集団に力を与えることのむずかしさが確認されたというべきであろう。(153頁) 

財政が厳しい中で格差に対応することの難しさは、過去の話ではなく、まさに今現在の話をしているようにも感じられる。

 

3-2 保険制度

民主党のクリントン大統領(任期:1993-2001年)は、医療補助制度改革で国民皆保険の実現を目指したが、議会の強い抵抗により実現しなかった。その後、民主党のオバマ大統領(任期2009-2017年)が「患者保護および医療費負担適正化法(オバマケア)」によって、税負担の問題は残つつも、多くの人が新しく医療保険の対象に加わった。

 

共和党の政策に目を向けると、レーガン政権時代(任期:1981年-1989年)には新自由主義の下で「強いアメリカの再生」が目指された。高額所得者を減税によって優遇する一方、低所得者向けの社会福祉関係費が削減されて格差が拡大した。そして、共和党のトランプ大統領は2020年6月に、最高裁に対してオバマケアの廃止を申し立てている。

 

これらの他にも、外交・軍事・経済対策など、政党によって政策に特徴があり、アメリカの歴史を学ぶことは、政治政策を学ぶことにもつながる。

 

4. アメリカが他国の憲法に介入する

アメリカ合衆国,国旗

アメリカは1895年に開戦したスペインとの戦争で勝利し、キューバとフィリピンを獲得した。キューバに対しては、新しい憲法にアメリカの要求が書き込まれ、実質的にキューバは保護国化されてアメリカの軍事基地が置かれた。

 

アメリカの歴史を知ると、憲法への介入という面で、終戦後の日本に対するそれとよく似た対応が、他の国に対しても行われていたことを、歴史から読みとることがきる。

 

 

さいごに

1冊1,200円のリーズナブルな価格で、これだけの量と質の本を出せるところに、山川出版社の強さがある。巻頭地図と巻末索引は、テレビニュースで流れる地名や人物名を調べるときにとても役に立っている。

 

シリーズの上下巻を合わせて読めば、アメリカ史の大きな流れを知ることができる。それは過去の政策を知り、今後のアメリカ合衆国の動向を探るヒントにもなる。本棚に置いていれば、いつかきっと役に立つ、中身の充実した2冊だった。 

 

 

< 参考文献・引用 >

『アメリカ史 下』 紀平英作 編    明石紀雄、清水忠重、横山良、久保文明、島田眞杉 著   山川出版社  2019年7月 第1刷