シリーズ月曜日のエッセイです。
今日のテーマは、ハンドメイドやイラストで、たびたび問題になるトレパクについてです。
- 盛んなアートイベント
- トレパク事件が定期的に起こっている
- 絵を見た時の違和感は、後から答え合わせがやってくる
- 言葉にできない違和感を大切に
- 「盗用された」を逆手にとったベテラン画家の若手潰し
- イラストレーターにかけられるトレパク疑惑の自衛策
盛んなアートイベント
ハンドメイドやイラストのイベントはけっこう沢山ありまして、デザインフェスタやクリエイターズマーケットなどの有名イベントが、東京ビッグサイトや大阪南港ATCホール、ポートメッセ名古屋などで開かれています。
2日間かけても見飽きないほど多くの出店があるので、とても楽しめるイベントです。
家族連れの方もたくさん来ていて、中学生から高齢の方まで広く楽しめます。
トレパク事件が定期的に起こっている
その裏で、イラスト界隈でたびたび起きているのがトレパク疑惑です。これは、他の人の作品を真似して自分の作品として売り出すことです。
同じモチーフや画材を使うと、パッと見た印象が似ることも多く、実際SNSでも「あの絵を真似したのかも」と感じるグレーな作品があります。絵はモチーフが同じだけでは著作権侵害にはならず、法律的には裁判で決まることですが、多数派が主張するもっともらしさの強さで個人の印象が決まってしまうのがSNSの恐ろしいところです。
実は、私も家に飾っていた絵の作家が、SNSで著作権侵害疑いをかけられたことがあります。結果は残念ながら黒、真っ黒。フォロワー1万人を超えていた水彩イラストレーターの人です。SNSの検証画像では、その人の数十もの作品が、pinterestという画像サイトの写真を許可なく水彩画にした著作権侵害の作品でした。
私の持っていた絵は検証画像一覧には無くて、白・黒・グレーのどれかも分からなかった作品なのですが、当然のようにモヤモヤとしました。数日は飾り続けたのですが、やはり絵をみるたびに「著作権がグレーな作品・トレパク疑惑」という言葉がよぎってしまい、残念な気持ちで処分しました。
線画の出典はともかく、塗りは本当に素晴らしかったんです……
絵を見た時の違和感は、後から答え合わせがやってくる
絵を買う前に気づけなかったのかと、モヤモヤしながら振り返ってみると、絵を買う前に「どこか言いようのない違和感」があったことを思い出しました。
色の塗りは確かに上手くて惹きつけられたのですが、顔の描きこみや胴と足のバランスには「あれっ?」と違和感を感じるものは確かにあったのです。
その時は、人気の作家の絵を手にできることや、1点ものなので他の人に買われてしまわないうちに手に入れたいという気持ちが勝っていました。
これは後からネットの検証で分かったことなのですが、
・制作スピードが異常に速い
・絵柄が短期間でコロコロと変わっていた。1種類2種類ではなくもっとたくさん
・絵柄のクセが、発表時期が近い作品に連続して表れていない
などの特徴があったようです。
フォロワー数が1万を超えていたり、企業とコラボしてグッズを作っていたとしても、こんなことが起こるなんて驚きでした。
言葉にできない違和感を大切に
世の中のイラストレーターの中には、「立った絵の上半身・座った絵の下半身・バイク・背景」と細切れにして、複数の他人のイラストから切り貼りして組み合わせたキメライラストを描いて、仕上げに左右反転させて売り出す人もいます。これも当然発覚して炎上しました。
他人の作品を切り貼りした作品は、必ずどこかに不自然さが残ります。また、その人の複数の絵を並べた時に統一感が欠けます。絵に限らず、生活や仕事をする中で時々感じる、「一瞬は魅力的に見えても、どこか言いようのない違和感」「なぜか落ち着かない気持ち」、こうした感覚は、けっこう正しいかもしれません。
「盗用された」を逆手にとったベテラン画家の若手潰し
一方で、2020年の冬には、若手の個展開催中に、大御所の影響力のある画家が、SNSで十分な根拠を出さずに一方的に「盗用された」と主張したことがあります。
美術の道では数十年のベテランが、駆け出しの若手の、それも個展開催中にです。美術用語の盗用(アプロプリエーション)と一般用語の盗用(パクリ著作権侵害)の区別を説明しないままの一方的な主張でした。
SNSで「盗用だ」と叫ばれたら、一時的にでも悪者にされることを避けられないんです。「私が絵にかいたモチーフを、相手も使ったから盗用だ、出典(=私の名前)を示せ」と言われる前に、予防をしておくことが大事です。
イラストレーターにかけられるトレパク疑惑の自衛策
トレパクの疑いを掛けられると、していないという証明はかなり大変です。
だからこそ、イラストを描く人は、疑いをかけられた時に備えた自衛が必要だと思います。
・練習作品に年月日を付けて保存して、絵柄の変化を記録しておく。
・定期的に、絵の作成動画を記録して発表する。フルでなくても、一つの工程だけでもネットに上げる。
・元ネタの写真を自分で撮っていることをアピールする。
・どうしてそのモチーフを使ったのかを、こまめに発表しておく。
イラストは、見た瞬間に「あっ、あの人の絵だ」とわかる絵柄があります。そこまで技術を高める途中では、やはり「なぜそのモチーフを、その画材で描いたのか」を言葉で示しておくことが、盗用疑惑や右クリックで画像をコピーに対する防衛策だと私は考えています。
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