今日は、小説を読むときのページをめくる瞬間の話です。
最近は本のページをめくる直前に次のページに何を期待していたかの記憶が薄れてきています。去年今年と多く読んでいる社会書やビジネス書では、やってきたページを次から次へと処理するといった読み方が求められます。
一方で小説をほとんど読まなくなり、先の展開を想像して期待しながら読む機会はめっぽう少なくなりました。だからかもしれません。図書館や本屋や電車の中でじっくりとページをめくる人の姿を見かけると、ページの先に何かを期待する気持ちを思い出すような気がします。
その瞬間は、時計の分針が1つ動いた瞬間を見た時のような思いがけないタイミングのように感じます。同志を見つけた時のような、同じ部活動をしている人を見かけた時のような感覚に近いです。
小説の良さを意識的に思い出すことも心の安定には必要かもしれません。小説は主人公が先に進むエネルギーや、少し先の未来への期待感をくれます。その期待感はページをめくる秒速に現れるように思います。スイスイとページをめくる時や、物語のクライマックスの手前でぐっと息をためてじっくりとページをめくる時など、1冊の中でも変化しています。
『夜のピクニック』の甲田貴子や、『スロウハイツの神様』の千代田公輝に赤羽環、『オリガ・モリソヴナの反語法』のオリガ・モリゾヴナ。
「また読みたい、先を見たい」と思わせてくれて、その瞬間に最高に高まっている読みたい気持ちに沿って、前へ前へと読み進めるエネルギーを与えてくれるのは小説の持つ魅力的な力だと感じています。
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