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『クロストーク』感想レビュー。空気を読むエンパス、テレパシーがあればコミュニケーションは上手くなるか?オーディオドラマ化期待作(ハヤカワ文庫)

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人工知能、テレパシー、コミュニケーション、情報社会と、注目のテーマが入っているSF小説です。コミュニケーションがテーマでもあります。

 

この記事では、単なる要約ではなく、「もしも相手の考えがリアルタイムで察知出来たら、空気を読むコミュニケーション強者になれるのか?」という視点から想像を広げます。

 

 

 

1.SF小説の世界とあらすじ

脳外科手術を受ければ、声に出さなくても、誰でもテレパシーが使えるようになる社会が舞台です。

ごく簡単な医療処置よ。たがいの気持ちを感じとることで、ふたりのあいだのコミュニケーションが円滑になるの。(p61)

気軽に手術を受けた主人公が、思いもよらない相手とテレパシーがリンクしてしまってドタバタに巻き込まれるSF小説です。

 

あらすじは以上です。

 

意図しない人とネットでつながったり、思いがけず相手から通知が来たり……ネットを使う私たちの世界にも共通するところがあります。

 

情報過多の世界で主人公たちの行動を追うことで、私たちの生活と通じるところを感じる点が、この小説の面白いところです。

 

 

2.テーマは情報過多、サイボーグ、人工知能

人の体という制約

主人公たちは、テレパシーが使えるようになったらバラ色の楽しい世界があると信じていました。しかし、実際には多すぎる情報を処理しきれず、気持ちが不安定になり、何とかして人とのコミュニケーションを拒否できないかを考えるようになるのです。

 

多すぎるテレパシーの情報に疲れて、地下の避難室に移ったり、心を閉ざす練習をしたりします。

 

高性能のセンサーを手に入れたとしても、思考や返答をするには人の体という制約があることを感じさせます。

 

思えば、その昔10人の言葉を聞き分けたらしい聖徳太子も、話す時は一つずつしか話すことができませんでした。

 

 

脳外科手術とリリースバージョン

この話は脳外科手術が関わることから、サイボーグとしての機械と人体の融合の話とも言えます。

 

もしもリアルで同じようなことが実現したらどうでしょう?

 

手術をした年代や脳に埋め込んだ機器のバージョンによって、その人が「古い人」「新しい人」という区別をされるかもしれません。

 

 

3.相手に合わせる配慮がコミュニケーション

テレパシーは、思ったことをそっくりそのままリアルタイムで相手に伝えたり感知したりできます。私が思うのは、テレパシーは語順操作ができないから不便?ということです。

 

どれだけ親しい相手でも、伝わる語順や時系列が違うだけで違った印象を与えます。

「嘘だよ……信じているよ」

と、

「信じているよ……嘘だよ」

では、

意味が正反対です。

 

それならば、口とテレパシーで同時に2つの文を伝えられたなら、どうなるでしょう?2人が同時に喋った時は?伝わる速度も2倍?理解度も2倍?

 

そうはいきません。言葉が混雑して長い文章では何を言っているか分からないでしょう。

 

お互いが食い気味で相手にかぶせて言葉を発信すると、データが入り乱れて記憶や理解がごちゃごちゃします。それこそが「クロストーク」と呼ばれるものです。

 

この言葉は、もともとは電波や通信の混線を意味していました。

 

いくら情報の伝達スピードが速くなったとしても、情報を整理したり、相手に合わせて加工する手間をかけるステップが必要だということを感じさせてくれる小説です。

 

相手の気持ちを勝手に察するのも、頭の中の思考を一方的に送り付けるのも、上手いコミュニケーションとは言いにくいです。

 

テレパシーも口を動かすのも、日本語でも英語でも、相手が受け入れようと準備できていなければ、こちらの声はただの音なのかもしれません。

 

4.この作品はオーディオドラマにできる?

オーディオドラマとは、映像がない音声だけのドラマ作品です。サウンドドラマや声劇とも呼ばれています。(詳しくは当ブログの記事をお読みください)

 

作品としては魅力的なテーマが目白押しです。人工知能、SFとテレパシー、コミュニケーション、情報社会。

 

すでにオーディオドラマ化されている野崎まど『know』とテーマが似ています。こちらも脳内に通信装置を埋め込んで、ハッキングをするSF作品です。

www.maruyoshi30.net

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の枠で作品化すれば、きっと面白いと思います。

 

テレパシーを文字ではなく音声で表現することは、オーディオドラマの工夫のしどころだと感じます。

 

私が想像するテレパシーは、銭湯の電気風呂のビリビリした感じや、ブーというスマホのバイブのような音のイメージです。小説内では(読ませるので当然ですが)きれいな整った文章で書かれています。

 

"私の声が聞こえますか?……いま、あなたの頭の中に直接語りかけています……"

 

そんな風にクリアに聞こえるものでしょうか?テレパシーは雑音が入ったり、もっと感覚的に届くものかもしれないと思います。

 

SFとオーディオドラマは相性が良いので、この小説は私がオーディオドラマ化を期待している作品です。

 

まとめ

SF小説の紹介でした。

 

人体に埋め込む通信機器とコミュニケーションを考えるキッカケにできます。

 

通信機器を持つ人体パーツは、今後も注目されるテーマの一つです。

 

刺激的なSF小説を探している人にはおすすめの小説です!

 

 

 

作者:コニー・ウィリス

タイトル:クロストーク(上)(下)

出版社:ハヤカワ文庫

初版:2021.11.20