このサイトでは、数あるオーディオドラマの中からおすすめの作品を紹介します。毎週土曜日に1記事投稿を目指しています。
今日は小説家である井上ひさしの原作を2022年に聞けるように脚色された、音響効果付きのオーディオドラマ作品です。
あらすじ
若手小説家である藤川は、大御所小説家の石上と一緒に鬼哭き(おになき)温泉郷に宿をとる。その夜、村に唯一つながる橋が壊れ、陸の孤島に閉じ込められる。宿で連続殺人事件が起き、凶器は万年筆。いったい犯人は誰なのか?
聴くたびに印象がガラリと変わる
放送は15分×5回。
最終話に、タイトルの「四捨五入」の意味や殺人事件の動機が明かされます。それを知る前と後では、作品の印象が180度ガラッと変わります!
原作通りの結末のどんでん返しが、オーディオドラマでも楽しめるシナリオです。
最終話を聞いてからもう一度最初から聞いてみると、「そういうことだったのか!」と納得がいくシーンがいくつもあります。
加藤諒さんの演技
主演の加藤諒さんはバラエティ番組にも出る芸能人でテンションが高めです。初聴きではすこしわざとらしい?と感じましたが、だんだんと、これくらいのエネルギーを出すくらいがハマり役でちょうど良いと感じるようになりました。
話や作品のテーマが重たくなり過ぎない、良いバランスでした。
原作をベースに忠実に再現
原作は農村社会派ミステリーとも言えます。作品に流れる1つのテーマは、お国と農民。かつては領主からの厳しい政治、1970年代の減反(げんたん)政策を色濃く反映させた作品です。
一昔前の作品なので、忠実に作った1-3話は大御所先生のセクハラシーンが出てきたりして、今の時代にこのシーンを出しても大丈夫かな?とすこし心配になりました。しかし、そこは脚本の力があり、4話5話でしっかりと回収してくれます。
脚色で2022年版にアレンジ
この作品に関わった脚本家は井出真理さん。オーディオドラマでは何度も名作に関わっているすごい人です。
原作『四捨五入殺人事件』は1970年代半ばの作品。脚色にあたっては、女性キャラクターや米どころの現状について、2022年の「今」お届けできるよう、心がけました。
このオーディオドラマでは、原作に現代風の要素が追加されています。セクハラおやじをたしなめるセリフもあり、現代の感性に合わせられていました。
また、2018年の減反政策の停止やコロナ下でのコメ価格の暴落など、井上ひさしが農家を思う作品テーマをしっかりと引き継いで、作品が作られています。
まとめ
一昔前の作品の価値観を表現しつつ、必要なところは現在の感性を入れて脚色する。
音声読み上げでは味わえない、オーディオドラマの世界を体験できます。
ほどよいエンタメ作品で、寝る前に聞くと快眠やリラックスの効果もあるかもしれません。
もちろん、最後のどんでん返しも楽しめる作品です。
ぜひ再放送、聞いてみてください。
※1週間たつと消えてしまいます。お早めに。
- 第1話:4/18(月)21時30分まで
- 第5話:4/22(金)21時30分まで
再放送を聴くにはNHKの公式サイトへ。
再放送のリクエストはオーディオドラマへのご意見・ご感想(nhk.or.jp)のページへ。
<出演者>
藤川武臣:加藤諒(Kato Ryo)
石上克二:陰山泰(Kageyama Tai)
小田加代、小夜:幸田尚子(Koda Naoko)
岡田:千葉雅子(Chiba Masako)
花村:政岡泰志(Masaoka Taishi)
高梨:野村昇史(Nomura Syoji)
畑中:森田ガンツ(Morita Gantsu)
荒木、大橋:渡辺紗弓(Watanabe Sayumi)
<制作>
原作:井上ひさし(Inoue Hisashi)
『四捨五入殺人事件』
制作統括:藤井靖(Fujii Yasushi)
脚色:井出真理(Ide Mari)
音楽:和田貴文(Wada Takafumi)
技術:山賀勉(Yamaga Tsutomu)
音響効果:野村知成(Nomura Tomonari)
演出:吉田浩樹(Yoshida Hiroki)
引用元:『四捨五入殺人事件』脚色・井出真理さんからメッセージをいただきました - 青春アドベンチャー - NHK