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今回は、バレンタインデーやホワイトデーの時期にぴったりの、チョコレートをテーマにした作品の紹介です。
主人公:中学3年生、女性
テーマ:チョコレート、再婚、父子家庭、日常
時間:約7分
サイト:オーディオドラマ「ビターテイスト」 - YouTube
1.あらすじ解説
主人公は母親を亡くした中学生。
父との二人暮らしをする日々の中で、ある朝、父親から再婚したいと話を持ち出されます。
亡くなった母親を忘れたくない気持ちと、新しく家に来る女性に反発する気持ちが入り交じります。ビターチョコレートの周りで起こる、嫌い、好き、と揺れ動く思いに注目です。
物語はコーヒーを淹れる音から始まります。
2.セリフPickup
沙耶 ――苦くないの?
隆 この方が美味いんだよ。
沙耶M 冷蔵庫には、私の大好きなシチューが入っていた……シチューの中には、私の大嫌いなニンジンが入っていた。
脚本はサイトで公開されています。
3.おすすめポイント
聞き終わった時にじんわりとした温かさを感じる作品です。
好きな感情も、嫌いな感情も、どちらも大切に人生の中にあります。「人の気持ちは変わるかもしれない……」その期待感が作品を味わい深くしています。
なかでも私が気に入ったのはチョコレートをパリパリ食べる音です。作品ではビターチョコの設定ですが、この音を聞いていると口の中が甘くなって、チョコが食べたくなります。
4.連想本と今日の言葉
オーディオドラマを聞いていると、以前に本で読んだ言葉が思い浮かびます。
作家の吉田篤弘(ヨシダアツヒロ)さんの短編小説集『月とコーヒー』です。
世の中に必要な物と必要でない物について書いた文章です。
「月とコーヒー」というタイトルは自分が小説を書いていく上での指針となる言葉のひとつです。
おそらく、この星で生きていくために必要なのは「月とコーヒー」ではなく「太陽とパン」の方なのでしょうが、この世から月とコーヒーがなくなってしまったら、なんと味気なくつまらないことでしょう。生きていくために必要なものではないかもしれないけれど、日常を繰り返していくためになくてはならないもの、そうしたものが、皆、それぞれあるように思います。
場合によっては、とるにたらないものであり、世の中から忘れられたものであるかもしれません。(p.332)
コーヒーとチョコレートは、
太陽の側か
月の側か
どちらでしょう。
良い作品を聴くたびに、オーディオドラマは私にとって太陽側かもしれないという思いが湧いてきます。
チョコレートや珈琲を用意して聞けば、物語の世界をより一層楽しめますよ。
<出演者>
岩井杏加(Iwai Kyoka)
高橋2号(Takahashi Nigou)
齋藤香織(Saito Kaori)
鈴木澄子(Suzuki)
みつる(Mitsuru)
<製作>
脚本:みつる
制作:ソラコト
引用元:
『月とコーヒー』吉野篤弘 徳間書店 2019.2.28
【脚本】オーディオドラマ「ビターテイスト」|ソラコト|note
公式動画:オーディオドラマ「ビターテイスト」 - YouTube