いま注目されている「AIに奪われない仕事」や「ChatGPTに代替されない仕事」はどんな仕事でしょうか?
私は、
- 掃除:人の痕跡を消す仕事
- 契約支援:「空間のひとり占め」を助ける仕事
の2つがあると考えています。
今回は、「AIとはコンピューターの事」という視点から、コンピューターが苦手で人間が得意な「掃除」の特徴を考えます。
- 1.ガストの猫型ロボットはどうして掃除をしないのか?
- 2.AIが苦手な仕事(1)場所・タイミング・量を指定できない仕事
- 3.AIが苦手な仕事(2)コンピューターが壊れる物理的変化
- 4.清潔な空間を独占したいニーズ
1.ガストの猫型ロボットはどうして掃除をしないのか?
ガストには人気の猫型ロボットがいます。「ねこちゃん」でも正式名称の「ベラボット」でもいいです。大事なことはあのロボットには腕がないことです。料理を届けることはできますが、椅子のシートに付いた食べこぼしを掃除することはできません。
ここから「AI≒コンピューター」が苦手な仕事を考えることができます。
2.AIが苦手な仕事(1)場所・タイミング・量を指定できない仕事
AIは学習できることが強みですが、たいていの最初の学習教材は人間が用意します。
テーブルや椅子や床のタイルに付いたミートソースの汚れは、「いつ、どこを、どのくらい」を指定することが難しく、AIに学習をさせる労力をかけるよりも、人間が足腰を使って移動して判断して掃除をする方が速いです。AIに床の模様とこぼしたミートソースを見分けさせる学習が必要だからです。
コンピューターが苦手な仕事は、
- 数量不明
- サイズ規格がバラバラ
- ドロドロ、ベタベタしている
- どこにあるか分からない(タテヨコ高さの座標情報が登録されていない)
などの特徴があると考えています。
さらに、「掃除」の要求水準は、人間が感覚的に判断をすることなので、AIを間にはさむよりも、人間が直接完了させた方が速いです。
他にも、次のようなタイミングや空間を指定できないタスクは、人間の仕事として残り続けると考えています。
- 天井の電球の取り換え
- 排水溝のネット交換
- 玄関の散らかった靴の整頓
- ホワイトボードマーカーのインクの確認
- 植え込みにポイ捨てされたビールの空き缶の回収
掃除は人間の得意分野として、生成AIと共存できると考えています。
3.AIが苦手な仕事(2)コンピューターが壊れる物理的変化
生成AIが問題解決の案を出したとしても、それを実行するのはまだまだ人がしています。このことが、AI全盛時代に肉体労働者やデスクレスワーカー(机に向かって仕事をしない労働者)が優位に立てる要素だと考えています。
人工知能≒生成AI≒ChatGPT≒コンピューターと考えれば、コンピュータそのものが壊れてしまう環境は人間の方が有利です。
半導体の腐食や破損が起きると、コンピューターそのものが動かなくなります。
- 上下の運動。(重力に逆らう滑らかな動き)
- 温度の極端な変化:暑さ、熱こもり、寒さ
- 水、湿気、薬品による化学的変化
- 粘土が不安定で不定形の物質を扱う(ドロドロ、ベタベタ、サラサラ)
など、人がこれらに耐えて自由に移動できること自体が、コンピューターに対して有利と考えることができます。
これらすべての環境変化への対応をAIに学習させるよりも、人間にもともと備わっている性質を使う方が、経営者にとっては労力が少なくて済みます。
人が熱を持って動けば風が起こってホコリが舞い、皮膚から汗が流れます。
人が足腰を使って汗を流す仕事は「底辺労働」ではなく、人間が有利で得意な必要不可欠(=エッセンシャル)な仕事です。
逆に、冷房や暖房で温度が一定に保たれている部屋の中だけで完結する仕事は、人間の汗、熱、ホコリ、水分などが取り除かれている環境なので、AIがどんどん入り込んできて活躍するフィールドだと思います。
これからのキャリアを考える時は、屋外でも屋内でも、「自分が移動したり、他人がやって来たりして、人と関わることが成果に直結する仕事」が強いと言えます。仕事で関わった相手が、出会う前よりもイキイキ&はつらつ&快適&スイスイと、動けるようになる仕事が人間にしかできない仕事だと思います。
4.清潔な空間を独占したいニーズ
人間が生きている限り、場所は汚れていきます。
掃除のニーズは残り続けますが、掃除はあらゆる場所でタスクの一部に組み込まれ過ぎていて「ありがたみ」が少ないのも現実です。
AIに奪われにくい「掃除」の仕事で高給を求めるなら、
- 掃除を職業の中のいちタスクではなく、「特殊技能を発揮した清掃」をする高給専業にする
- 掃除が完了した後の「空間&時間&他人のリソースの独占につながる利用契約」をサポートする仕事:(広告、広報、営業、士業、外部にアピールできる専門技能職)
などが良いと考えています。
ここから数回に分けて、
第2回:掃除を職業にする選択肢と課題、キャリアチェンジの道筋
第3回:契約をサポートする仕事への転換のすすめ
第4回:人を移動させずに囲い込んで延命させるナーシングホームが、急性期病院よりも儲かることのマズさ
このブログでは、転職やブランク後の再就職にも使える考え方を発信しています。