このサイトでは、医学・心理学・教育と発達障害(主にASD・ADHD)をテーマに、認知の特徴や仕事術を紹介しています。
今日は「マルチタスクをシングルタスクに分解して、超スピードで処理する」というアイディアを紹介します。
特に、発達障害と診断済みの人でクローズ就労(障害名を公表にせずに働くこと)を検討している人には有効なアイディアです。
- 1.「仕事の超スピードシングルタスク化」をすれば、優先順位付けやマルチタスク実行の苦手を見せずに済む
- 2.発達障害者の工夫に「IF-THEN」が使える
- 3.closed就労の工夫のコツ
- 4.まとめと関連本
1.「仕事の超スピードシングルタスク化」をすれば、優先順位付けやマルチタスク実行の苦手を見せずに済む
1-1 マルチタスクの目的は「間に合わせる」こと
なぜ発達障害者が「マルチタスクが苦手」と言われるのでしょうか?
私の考えでは、会社や学校で起こった「発達障害者が間に合わなかった経験」から、広く言われているものだと推測しています。
今日1つ提案するのは、「仕事を間に合わせれば、マルチタスクうんぬんは(とりあえず)問題では無くなる」という考え方です。
マルチタスク処理や優先順位付けは、目的ではなく方法論です。
目的を「間に合わせること」に設定すれば、「そもそも優先順位をつけない超スピードシングルタスク」を実践する道も見えてきます。
1-2 超スピードシングルタスクが役立つ領域
超スピードシングルタスクが行えるのは、相手とのやりとりや新しい調整ごとが少ない領域です。それは「パターン化」できる仕事でもあります。パターン化できる仕事を、どんどん先に進めて、期限に間に合わせようという考え方です。
2.発達障害者の工夫に「IF-THEN」が使える
発達障害者にとって、タスクの切り替えの負荷は、健常の人が想像するよりもはるかに大きいです。休憩を始めることさえも、脳への負荷の一つです。
IF(もしもこうなったら)、THEN(こう行動する)というパターンづくりをすることで、脳への負荷を減らすことができます。
- こうなったら、仕事が完了扱いにする。
- 迷ったときに、この人に質問しに行く。
- 物品の整理整頓をして、選び出す作業を減らす
などです。
3.closed就労の工夫のコツ
3-1 とことんパターン化する
クローズ就労のメリットは、オープン就労に比べて、垣根のない挑戦と経験ができることです。そこでは、パターンの引き出しを作る機会がたくさんあります。先ほどの「If-Then」の計画もパターン化のひとつです。
また、「報連相などの、情報伝達としてのコミュニケーション」もパターン化できるので、協力を得て、報告スタイルと報告タイミングはどんどんパターン化しましょう。
3-2 タスク飽和状態のサインに気づく
疲れに気が付くことはとても大事です。
- 残業時間が増えている。
- 昼休憩をとらなくなっている。
- 新規に頼まれた仕事が、最優先事項に切り替わっている。
- 理解するために、整理して並べようとする。
特に注意をするのは、昼休憩をとらなくなることです。休憩時間にいくら仕事をしても、タイムカードに印字されない労働は「無いもの」として扱われるので評価されません。
脳を休めるために、意識的に休憩をとることはとても大事です。休憩をとることは法律でも認められているので、積極的にとりましょう。
また、タスクを整理するために「並べる」という作業の先には「選び出す=優先順位を状況に応じて付ける」という苦手な作業が待っています。優先順位に迷ったら即質問する。これもIF-THENのパターン化です。
4.まとめと関連本
まとめ
マルチタスクは、分解をすればシングルタスクの組み合わせです。「超スピードシングルタスク」を連続して行うことで、苦手な優先順位付けやマルチタスクをしなくても済むという工夫ができます。優先順位に迷ったら人に聞くIF-THENも効果的です。
関連おすすめ本3冊
仕事では、途中で「タスクを整理しよう」と思った時点で、もうすでに脳内の処理スペースは飽和状態です。「整理するために並べる」という特性をこの本で納得しておきましょう。
<官僚に学ぶ人を動かす論理術>
クローズ就労で働くとき、必要な根回しや、論理と感情の使い分けは、官僚の人から学んでみましょう。パターン化した論理性は、その使いどころが大事です。「どのタイミングで使うのか??」をこの本で知ってみましょう。
<職場の問題地図>
「報連相の形式と、いつどのタイミングで報告するか」を、上司の協力を得てパターン化して実践するヒントが書かれています。参考にして成功すれば、もうためらったり迷ったりすることはありません。負荷を大幅に減らすことができます。
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